月刊アートコレクターズ「完売作家 2024」
飯島モトハ「こんな「買い方」をしてはいけない!」
の特集インタビューを見て、とても共感を覚えた。
一民間人であるコレクター自身がアートを半分公共的な位置付けで所有するということを言っている。アート・美術品という存在の定義にいろんな解釈があるのは、公共性と個人所有の両面を兼ね備えているからだろうと思う。
個人が生み出した創作物が、歴史を越えて引き継がれる社会の財産として位置付けられるものは世の中にさまざまである。言葉としての文学は印刷によって、音としての音楽はインターネットによって、広く社会に行き渡っている。
しかし、立体表現としてのアートはデジタルのインターフェースで共有するのは限界があり、実物を鑑賞することでその表現と創造性を身体的に理解しているように思える。マッチングアプリで出会うきっかけを得られても、実際に対面しないとその空気感や温度感が伝わらないのと構造が似ている気がする。
以下、飯島モトハ氏の記事を引用する。
これから自分がアートを買うときの参考にしたい。
1.
もともと美術作品を買う時は20年は売らないと決めて買っているんです。
いわゆる株の売り買いだと数週間から数ヶ月くらいで動かすことが多いのですが、それを美術に使ってしまうと、短期でぐっと伸びる作家の作品ばかりを買うというおかしなことになってしまう。
2.
コレクターは人類共通の財産を一時的に預かっていて、時が来たらそれをまた公共に返すという、半分公共事業のようなことをやっているからこそコレクターと名付けられ、敬意を受けたりもすると思うのです。株の売買みたいなことをしてしまったら、自分の利益を追求するだけなので、コレクターとは言えないかと。
3.
私が作品を買う時に大事にしていることは、「時代性」と「土着性」です。同時代を生きるコレクターと作家は、見ているものが同じでお互いに成長できます。さらにたとえば日本に生まれて日本で生活し、日本の社会で揉まれていると、他国では出せない日本独自のものが出てくる。それが土着性です。
美術の本場は欧米だと思われがちなので、それに媚びるのは簡単ですが、自分の生まれた時代や土地に作家は正面から向き合ってほしい。そうすることが持続的な活動に繋がるのだと思います。
4.
コレクターは一番最初に金銭的な価値を作品に認めてあげることのできる人物なわけですよね。作家とギャラリーが値段をつけても、買ってくれる人が誰もいなければ、誰にも価値を信じてもらえない。そんな時に美術史に載せたいという意志をもって買えるといいですね。
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引用元 月刊アートコレクターズ「完売作家 2024」