現代アートギャラリー 山本豊津から学ぶ「アートと社会のつながり」

しゅんすけ ・2024-05-06 ・32pv
#読書 #感想 #東京画廊 #山本豊津

現代アートギャラリー東京画廊山本豊津の著書からアートと社会のつながりを考察する。

語られている各論詳細はそれぞれ本の目次を読むとわかるが、どれも現代社会の経済とアートについて核心を得ていて読み応えがある。全ての本において、大きく次のようなテーマで構成されていると思う。

・アートとは何か(資本論からの解釈)
・アートの価値形成について、その成り立ちとキュレーションの役割について
・資本主義における芸術の表層について
・コレクション(蒐集)の歴史(経済と美術の相関連)について
・国力としての文化芸術について
・日本(人)とアートについて(西欧との比較)

個別の著作の感想を改めて書いていきたいが、どれも本当に面白い。初版から数年経ったいま読み返しても、学ぶべきところが多い。
いずれの著作も最後の章では、「これからの日本社会においてアートがどのように希望を切り拓いていけるのか」という著者の想いが静かに感じられる。

現代アートギャラリー 山本豊津著書一覧

(1)資本主義における商品としてのアートの可能性

アートは資本主義の行方を予言する 画商が語る戦後七〇年の美術潮流

1.商品としてのアート

商品としてのアートは、お金そのものと似ています。お金ほど「使用価値」が低くはないにしても、低いからこそお金と同じように「交換価値」が上がる可能性があります。有用性が低いもの、「使用価値」が低いものほど価値は転換し飛躍する。その飛躍によって「交換価値」がどんどん上がっていく。絵画とはまさにそんな資本主義の”価値と価格のパラドックス”を体現するものだということができるのです。

2.価値転換

原価ゼロのものでも、人が見向きもしないようなガラクタでも、何かしらのコンセプトのもとで再構成する。そこに新しい価値を生む。その価値転換を実現するのがアーティストであり、芸術的、創造的な行為なわけです。

(2)「蒐集(コレクション)」から見る西欧資本主義の価値観

コレクションと資本主義 〜「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる

3.『ミュージアムの思想』と「蒐集」の概念

「蒐集」は「収集」と発音は一緒ですが、微妙に違います。「収集」がたんに「集める」という行為を表すのに対し、「蒐集」は自分たちの価値基準に応じて分類し、選別しながら蒐(あつ)めるというニュアンスが強い。
 旧約聖書の「創世記」に描かれている「ノアの大洪水」から近代、そして現代の西欧の歴史と発展の根本に、「蒐集」の思想がある。その端的な例が古代ローマの時代から植民地支配を経て、世界中から蒐められた膨大な美術品や文化財、歴史的遺物などのコレクションです。
 イギリスの大英博物館やフランスのルーブル美術館に行くと、一日では回りきれないほどの膨大な展示品があります。彼らはたんにモノを蒐めて持ち帰ったのではありません。世界中の珍しいもの、貴重なものを選別し、蒐めることが「力」になると知っていたのです。
 そこには世界中の富や財を蒐集することで自分の富を肥やすという、直接的な蓄財の意味もあったでしょう。しかし、それ以上に重要なのは、世界中の価値を集め、自分たちの価値観によってそれらを体系化し、「世界を所有すること」です。そして、それらを一般に公開することで、所有している「自分の立場と力を誇示すること」なのです。所有する側はつねに所有される側の上に立ちます。大英博物館が膨大なコレクションを無料で公開しているのは、決して気前がよいからではありません。コレクションを公開することで自分たちの力を誇示し、ヒエラルキーの上位にいることを世界中の人に知らしめたいという意図と戦略があるのです。

(3)会計学からみるアートの評価システム

教養としてのお金とアート 誰でもわかる「新たな価値のつくり方」

4.価値を生むのにもっとも大切な「個人の力」

個人が自立して初めて価値は生まれる
価値や価格を考えるうえでまず前提の話をしたいと思います。もともとこの世界には価値も価格もありません。近代社会で唯一、前提となるのが「個人が自立した存在であること」で、1票の選挙権が基本になっています。僕たちの表現は選挙の1票でしかない。だから、その1票をないものにしたら、この社会は成り立ちません。近代以前は神がすべてを決めるので個人という考え方はなかった。僕たちは神から自律して個人になったから、その個人を査定しないといけません。だから、この個を認めることが最低限のルールなのです。
 個人の自立が前提となって、価値や価格の議論が始まります。近代社会では自立している個人が価値をつくり、それを他人も必要とすれば価格が生まれるのです。自分がつくったものを他人が認めないと、価値や価格にはならない。だから価値や価格は「社会関係」であると言えます。

5.個人としての資産価値が大切になる時代

あらためて「美意識」の意味を問う
美意識というのは、目の前に出された絵の価値がわかるとか、美術史的な知識があるとか、そういうことではなくて、究極的には「自分の人生を、生きているうちに作品化しようとする志」だと思うんです。僕たちが先立を見て美しいと思うのは、自分の人生の結末を完結できている人です。そのために芸術があると僕は思っているんです。つまりコレクションです。芸術家は、自己を商品化するとかしないとか考えるのも大切ですが、自分の人生を自分の作品として成立させるというダ・ヴィンチのやってきたことが、究極の目標だと思います。それが美意識だなと思うんです。コレクションも表現なのでコレクターの美意識が出ますよ。


しゅんすけ

アートコレクターを目指して、当ウェブサイトを立ち上げる exhiworkを運営している管理人