コレクター初心者におすすめのギャラリー論【アートコレクター入門②】

しゅんすけ ・2024-05-30 ・67pv
#美術商画廊 #企画画廊 #貸画廊

コレクター初心者におすすめのギャラリー論【アートコレクター入門②】

アート初心者にとって分からないことの一つに、ギャラリーと展覧会の種類がある。いろいろな展覧会があるが、そこで取り扱われているアートの種類や運営主体もさまざまである。

・ギャラリーが作家をプロモーションする展覧会
・海外作家や物故作家を仕入れて販売する展覧会
・新人作家が自分でギャラリーを借りて開く展覧会

店構えや案内だけではわからないことが多いが、アートコレクターにとって、ギャラリーとの出会いはとても重要である。

むしろ、あなたのコレクション人生は、どのようなギャラリーと出会うかどうか、といっても過言ではない。

アート作品を購入する基準の1つとして、ギャラリーの種類を整理する。

世の中のギャラリーの種類あれこれ

私たちが展覧会でアートを購入する時に行くギャラリーというのは、どのようなギャラリーがあるのか確認する。

・個人ギャラリー
・百貨店の美術ギャラリー
・アートフェア(展示即売、見本市、骨董市など)

以上が主な店舗であろう。アートフェアに関しては、ギャラリーが集って開催されていることが多いので、実際に購入する店舗としては、個人ギャラリーと百貨店ギャラリーの2択とさえ言えるかもしれない。

では、この2大ギャラリーの事業種別はどうなっているのか。
アートコレクター入門: 銀座老舗画廊の主人と学ぶ特別教室
から引用すると、大きく3つの画廊の種類があるという。

長い付き合いをしたいなら、歴史ある業態の美術商画廊

まず、あなたがアート初心者であるなら、はじめに一度は訪問しておくのが良いギャラリーは美術商画廊である。先ほどの著者である秋華洞や京都の思文閣に鉄斎堂、自分の知り合いである橋本画廊もこのギャラリーに属する。

主に同業者やコレクターから美術品を仕入れて、新たなコレクターに販売する業態であるため、必然的にセカンダリー作品の取扱いが多くなる。市場評価を気にする日本人にとっては手堅いコレクションになるはずである。

定期的に企画展を開催しているところがよい。

仕入れて売るだけであれば、同業者や百貨店などに卸をするだけでも商売は成り立つため(「ディーラー」や「業者」と呼ばれる所以である)、卸専門の美術商も多い。そんななか店舗を構えて積極的に売買しているギャラリーであるので信頼もできる。

だからこそ、一般のコレクターへ向けて直接販売しているところは、コレクターとの新たなつながりを開拓することを本業としているということもできる。ある程度関係性ができれば、自分の予算を伝えて、手に入れたい作家の作品を仕入れてもらうこともできるギャラリーもあるだろう。

だが、そうは言っても、信頼できるギャラリーかどうかを判断できない時は、東京美術倶楽部など美術商組合に所属しているかどうかを見るとよい。一定の目安にはなる。

新人作家を発掘したいなら、アーティストのプロモーター企画画廊

次におすすめしたいのが、主に現代作家、現代アートを取り扱う企画画廊である。美術商画廊が近代美術や古美術などのセカンダリー作品を主な商材とするのに対し、企画画廊はプライマリー作品が主な商材である。

ギャラリーが作家と専属契約をもち、プロモーションとして企画する展覧会である。また、現代アートの画廊は在庫をもたないで作家からの委託販売をする形態であるのも特徴的である。

日本で最初に現代アートを紹介した東京画廊をはじめ、奈良美智と村上隆を扱っていた小山登美夫ギャラリーや、会田誠や山口晃を扱っているミズマアートギャラリーなど東京に広く分布している。

現代アートを扱う画廊であってもセカンダリー作品がないわけではない。オークションや交換会に顔を出して美術商としての仕事もしていたり、美術商画廊が現代アートを専門に扱う企画画廊を立ち上げたりと、大きな区分けがないようにも見える。

コレクターにとっては、セカンダリー作品をメインで扱っているのか、プライマリー作品を企画しているのか、展覧会を開いている店舗のイメージやブランドで理解するとよい。

現代のプライマリー作品を積極的に取り扱うギャラリーでコレクションすることは同時代の作家を応援して育成することでもあり、コレクションの醍醐味とも言える。

地方在住コレクターにとって信頼できる百貨店・デパート

補足だが、百貨店・デパートは、在庫を持たないことや外商という存在がいるため、美術商画廊と企画画廊の両方を兼ねているところが多いように見える。地方在住のコレクターにとっては、頻繁に開催される身近な展覧会として、最も頼りになるギャラリーと言ってもよい。

贋作がニュースになった際も全て返金するなど、百貨店の信用はどこにも負けない自負があるのだろう。令和になった今でも、やはり安心して購入できるギャラリーの第一候補といってもいいと思う。

誰にも開かれたレンタルギャラリー、貸画廊

最後に紹介するのが、一番敷居の低い貸画廊である。主に時間貸しのスペースを提供するギャラリーのことであり、作家自ら展覧会を開催したい場合に利用される。

ただし、アートコレクター初心者にとってお勧めするのが難しい画廊でもある。というのも、このギャラリーで開催される展覧会に関しては、その作品がアート(美術品)である保証がない可能性がある。

アートとは何かを定義するのは難しいが、村上隆曰く「現代におけるアート(アーティスト)の定義は芸術系の大学を卒業する事が最低条件であり、できれば論文を発表している事」とのこと。
個人的な解釈としては「セカンダリー市場に引き継がれる作品であること」つまり「買取られたり寄付として美術館に所蔵される可能性のある作品になるか」である。

もう少し簡単にいえば、先ほどの美術商画廊や企画画廊などのギャラリーによって紹介される展覧会とは異なり、その作家のキャリアをアートコレクター自身で調べる必要があるのだ。

とは言ったものの、誰にでも開かれた展覧会としてはとても民主的であり開催頻度も多い。訪れる人にとってもアート活動に触れるよい機会であることは間違いないのが貸画廊の展覧会である。

まとめ

最後にアートコレクターにとっておすすめ順でギャラリーをまとめる。

1、美術商画廊はセカンダリー作品を主に扱い、日本人的なコレクションに向いている。
2、企画画廊は現代アートが多く、同時代の作家育成という観点でのコレクションとしてもよい。
3、貸画廊は敷居が低いが、コレクションにはハードルが高い。

アートコレクターにとって、ギャラリーとの出会いという視点で、それぞれのギャラリーを整理したが、いかがだろうか。

自分自身はじめは違いが分からず、そこで開催されている展覧会がアート市場で取引されることを前提としているアートを売っているのかどうか判断がつかなかった。自分もそうだったように、ギャラリーとの出会いを求めている人にとって参考になれば幸甚である。


前回記事
- 最初の一歩を後押ししてくれたアート入門書【アートコレクター入門①】


しゅんすけ

アートコレクターを目指して、当ウェブサイトを立ち上げる exhiworkを運営している管理人